あの有名人達の三つ巴! 江戸が舞台のコンゲーム小説『三悪人』

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オススメ時代小説第6弾になります。今回は、以前『鯖猫長屋』でもご紹介しました田牧大和さんの時代小説『三悪人』です。

 

続編の『春疾風 続・三悪人』も出ています。

この「三悪人」とは、遠山金四郎、鳥居耀蔵、水野忠邦のこと。

桜吹雪を見せながらの決め台詞は皆さまよくご存知の北町奉行「遠山の金さん」こと遠山金四郎。そのライバルで、「妖怪」とも「蝮の耀蔵」とも言われた南町奉行鳥居耀蔵。そして悪評高い「天保の改革」を断行した老中水野忠邦

いずれも実在の人物です。

ただし、この作品は三人がもっとずっと若い頃のお話。なので、いずれもさほどの地位には在りません。後に袂を分かつことになりますが、この時はまだ(一応)組んでいます。

しかしそこは野心満々の曲者三人なので、互いが互いを利用する気も満々です。

目黒は祐天寺の焼け跡で見つかった、身元の知れない女と若い僧侶の焼死体。どうやらこの火事は水野の殿様とつながるらしい。ならばこれをネタにひとつ……と金四郎と鳥居はほくそ笑むのだが……というお話。

読んでいる方は「騙し騙され」が繰り広げられているのを、ハラハラしながら展開を追うことになります。

三人が三人とも知略を尽くしての化かし合い、足の引っ張り合いを繰り広げる、痛快な「コンゲーム小説」となっています。

「悪人」とありますが、もちろんただ「悪い」だけではないのが、この物語のミソでもあり、スッキリするところです。

三人が三人とも「キャラが立っている」ので、誰かのファンになってしまいそう……。

歴史上の人物の扱いって難しいですよね。それをよくここまで個性を書き分けたなぁ、と、まずそのことに感心してしまいます。

三人の中で一番知名度が低くて好感度も低そうなのが鳥居耀蔵ですが、特に続編では「憎みきれないキャラ」として上手く描写されていると思います。

心情的に、三人のうちのいずれに肩入れしてしまうかによっても読み方が変わるかな、と思います。

それから文章のテンポの良さ。このテンポの良さに釣られてついつい、先へ先へと読み進めてしまいます。

続編をもって完結、というわけではなく、物語の展開としても続きそうな気配ではあるのですが、掲載誌が無くなってしまったようで、今後のことは不透明です。

「傑作」と新聞の書評で紹介されたり、「映像化してほしい」という声も多いこの作品、できれば続いてほしいところです。


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