仕事と恋と……揺れる女職人を丁寧に描く「上絵師 律」シリーズ

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オススメ時代小説第5弾は、知野 みさきさんによる「上絵師 律」シリーズを。

シリーズ第一作は『落ちぬ椿:上絵師 律の似顔絵帖』です。

上絵師は、着物の柄を描く職人のこと。主人公は、二親をある事件で失い、幼い弟の為に絵筆を握る女職人「律」。名人だった亡き父の跡を継ぎ、布に絵を描く「上絵師」で身を立てる決意をするものの、「女」ということで軽んじられ、なかなか上手くいきません。

いつか着物の依頼を任せられるようになりたいと夢を描きつつ……ひょんな事から、お上の似顔絵の仕事も引き受ける事に。

律が想いを寄せる幼なじみ(実は相思相愛)の「涼太」はお茶の葉を扱う商家の若旦那。身分違いの恋にも仕事にも悩みつつ、律は事件に巻き込まれていきます。

職人として高みを目指す律は一途に絵筆を握りますが、若さ(当時としては20過ぎなので若くはありませんが)ゆえに、時折迷いも……。

そんな律を叱咤激励するのが、周囲の「大人たち」です。

律の隣に住む、子供の頃からの優しい師匠「今井先生」、律に仕事を与え、厳しいながらも導いてくれる呉服屋「池見屋」の女主人「類」、茶葉屋「青陽堂」を切り盛りする女将にして亮太の母親である「佐和」など。

とりわけ年上の女性陣がいずれもキリリと勁く気高く、それでいて愛情深いのがなんとも恰好良いです。

第一作から、椿、百日紅、百合など……タイトルに「花」や花にまつわるものがつくのも素敵ですね。

で、驚いたのが、作者の経歴です。

カナダ、バンクーバーで銀行の内部監察員を勤める傍ら小説を書かれているそうです。

律はともすれば気弱になったり、あるいは逆に慢心してしまったり、色々な事に迷い、惑いますが、心の描写が丁寧になされているので、嫌味も無く、心地よさを感じます。

律と亮太のじれったくももどかしい恋の行方も最新刊では落ち着き、今後はどう展開していくのか……。

今後は律の「上絵師」としての仕事ぶりが、もっとクローズアップされたらいいな、と思います。


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