何かの「解説」をされているブログを拝見すると、よく「専門用語を使う説明はヘタな説明だ」という意見を見かけます。
「私はなるべく専門用語を使いません!」
「初心者には分かりやすい説明をするべきだから!」
たしかに、解説のページの中には、専門用語をほとんど使わない例も見られます。これらのご意見、私としては、半分「同意」で、半分「否定」です。
私が専門用語を使う理由、それは……
「言葉は概念」だから、です。
例を出しますね。
「ノンデザイナーズ・デザインブック」という、プロではない人向けのデザインの本があります。
こちらの冒頭に、「ジョシュアツリーの悟り」という事が書いてあります。
この本の作者が、(おそらくローティーンの頃に)植物図鑑をプレゼントしてもらったそうです。
そこには、特徴的な枝と葉を持つ「ジョシュアツリー」の写真があり、作者は、
「こんなヘンな木は一度も見たことがない、北カリフォルニアには無いに違いない」
と、言ったそうです。
しかし実際には、その後すぐご近所のあちこちで「ジョシュアツリー」の庭木を「発見」するのです。
「ジョシュアツリー」は、庭木としてはかなり一般的な木だったのに、「ジョシュアツリー」という言葉を知らなければ「ある」ことさえ分からない、というお話。
作者は、こう続けています。
「一度名前を呼ぶことができれば、あなたはそれを意識し、それを支配し、それを所有し、それをコントロールできるようになるのです。」
もうひとつ、もっと身近なたとえも書きますね。
年配の方によくあるのですが、「印刷」を「コピー」と仰います。
なので、「コピーできないんだよね」と言われた時。
ご本人は「印刷」、相談を受けた方は「複写」と思っていると、かな~りトンチンカンなやりとりになってしまいます(汗)
つまり、「正しい言葉」を知らないと「相談もままならない」わけです。
もし、あなたがパソコンの操作をしていて、もっと詳しいことを知りたいと思ったら、「キーワード」で検索するでしょう。
その場合、「正しい用語」を知っている人と、知らない人とでは、おそらく検索の難易度や正確性にかなりの差が出るのではないでしょうか。
何よりも、「公式ヘルプがその専門用語を使っている」場合、何か操作方法を知りたいと思っても、「公式のヘルプ」にたどり着けないかもしれません。
これは大きな差ですよね。
ほかの人に相談するにせよ、サポートに問い合わせるにせよ、「正しい用語」を使わないと、「正しい答え」は得られないかもしれない……。
ですので、もしその人が「解説のページ」を離れた後も、その人が困らないためには、専門用語「も」知っておくべき、知らせておくべきだと思っています。
ただ、平易に説明をするべき、というのには賛成です。
先日本屋さんで「加入してもらうとスマホアプリで割引になるんですよーポイントでー」と、杖をついたおばあちゃんに、一生懸命説明をしている店員さんを見かけました。
一方おばあちゃんは、「スマホ……? アプリ……?」状態で、かえって話がややこしくなっている感じでした。
「その説明じゃ分からないだろうなぁ……」と、おそらくはその場面を見ていた全員が思っただろうと思います。
まず、「携帯電話はお持ちですか?」ぐらいの平易なところから説明を始めても良かったんじゃないなぁ、と……。
ゆえに私は、説明に専門用語を使うか? と問われたら。半分「同意」で、半分「否定」です。
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